FAB分野とファクトリーの関連性

3Dプリンタ分野と福祉分野をくっつける活動です

本活動の当初から、次のような説明の仕方をして来ました。

★最先端の3Dプリンタ技術を、最末端?の、ごくごく小さな日常生活の改善を生み出すことに使う、極めてローエンドな活動です。

★3Dプリンタ分野と福祉分野の最先端の分野では、義手や義足をつくることや、パラリンピックの障害者アスリートの補助具を開発するなど、様々な連携が行われています。なので、それら最先端の話は、私たちがしなくても、世界中の当事者や研究者が協働して取り組んでいる。それは、このファクトリー活動とは別のものです。

★私たちは、日常生活のちょっとした不便や楽しさを、ちょこっとした3Dモデリングと3Dプリンティングで改善する、生み出す仕組みがあることを、できるだけ多くの当事者と支援者の皆さんに知っていただくこと。それが第一と考える取り組みです。 

インドの小さな村のFABと、私たちの3Dプリンタ活動

マサチューセッツ工科大学(MIT)のニール・ガーシェンフェルド教授と、慶応大学環境情報学部 田中浩也教授の研究・実践に、勇気づけられました。

★設立発起人のひとりである私(三野)は、3Dプリンタに出会った2013年から、関連の書籍やネット上の記事などを読み漁っています。その中で、日本のソーシャルファブリケーション研究・実践の第一人者である慶応大学環境情報学部 田中浩也教授の著作物やネットメディアでのインタビューなどを精読し、勝手に「田中浩也語録」をつくっています。

★田中教授の体験を元にした記述の中に、私たちが2013年から行って来たこと、そのものが書かれていました。そうか、私たちは、こういう段階なんだ。というか、「この段階」を日本中の各地の福祉分野に生み出して行くことが、私たちの活動なんだな、と。実感できた記述です。少し長いですが、ぜひ、お読みください。
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(背景の説明・三野)
★2005年、マサチューセッツ工科大学(MIT)のニール・ガーシェンフェルド教授「FAB-パーソナルコンピュータからパーソナルファブリケーションへ」が出版されました。この本の中で私がもっとも注目したのが、次のケースの記載でした。
ガーシェンフェルド教授が、実験的な研究としてインドの地方都市の近隣の小さな村にファブラボ的な機材を送り、「特に何も指導もせず」、自主的な運用に任せているという事例です。そのインドのファブラボに田中先生が実際に行った時の感想が田中先生の著作の中にあります。

==引用、ここから======================

2009 年、インドのファブラボでした。
場所はムンバイに近いプネーという学園都市からさらに車で砂利道を4時間、パバルという小さな小さな村です。水道水は濁っているし、道路も整備されていない、電気も1時間に1回ぐらい落ちてしまうような、日本でいうと昭和 10 年代~20 年代ぐらいの生活水準の辺境の村です。
でも、そのファブラボにはレーザーカッターや 3D プリンター、3D スキャナーといった最先端のテクノロジーが揃っていて、現地の人々がそれらを使いこなして生活に必要なものを自給自足で作っていました。
新興国が先進国の後追いをするのではなく、最新のハイテクノロジーを使って、これまで日本や西欧がたどってきたのとは全く違う、独自の近代化の道を歩んでいることも驚異的でした。そしてみんな楽しそうなのです。

==引用、ここまで======================

★(三野、感想)
・そうなんです。私たちの活動は、設計や3Dモデリングの専門家・プロがいなくても、20%程度の手描きのアイデア図をもとに3Dモデリングを覚えたての障害者がモデリングして、とっとと試作品をつくる。依頼者が使う。ダメだしする。またモデリングする。を、繰り返して来たのです。それは、実に、「楽しい」んです。

もっとたくさんの感想や、この事例が持っている多くの意味がありますが、まずは。ここに書き残しておきます。
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田中浩也研究室⇒http://fab.sfc.keio.ac.jp/


HIROYA TANAKA LAB. Social Fabrication Laboratory, Since 2005
#3dprinter #fablab #福祉 #障害者高齢者3Dプリンタファクトリー 

「日本のFabは、ホビー中心なのか?」

★ネット検索で発見した、2013年に横浜で開催された「日本ファブラボ会議2013」のイベントレポート。
ここにも、私が本を読んだり、ネット検索でFab関係の情報を集めていた時に感じた「当時の日本全国のFabに対する、ちょっとした違和感」と同じ感覚の感想が、東ティモールからの参会者の発言として掲載されていました。

★日本全国から集まったFAB LABをはじめとしたFAB施設の従事者が様々な発表をしていますが、その中で、「現在のFABで、その運営だけで経営が成り立っている所はないのではないか」という発言の流れの中に、下記の発表が続いていました。

★「日本ファブラボ会議2013」のイベントレポート第2部「あしたのFabのカタチ」(前編)2013年10月04日
★発表者:FabLab Shibuyaの梅澤陽明さん

★http://www.ashita-lab.jp/special/1406/

==引用、ここから======================

梅澤さんはFAB9(第9回世界ファブラボ会議)に参加した東ティモールの人から、こんなことを言われたそうです。

「日本でのパーソナルなものづくりを見ていると、ホビーですね。趣味の延長でファブラボを使うというのは、東ティモールでは参考になりません。東ティモールには社会的な課題が多くひそんでいて、そこへ直接的に結びつくような場所としてのファブラボをつくりたいんです」

==引用、ここまで======================

★そうなんです。2013年から障害者就労支援事業所で自然発生的に始まった私たちの活動は、趣味のものをつくる前に、或いは並行して、社会的な課題を解決して行きたい。そんな考えが原点となっています。

★「大企業が手を出せない、ひとりひとりの違ったニーズに対応するグッズを3Dプリンタを使って、当事者が自分たちで”楽しく”つくる」これが、端緒でもあり、目標であり続けるものだと考えています。